大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)943号 判決

被控訴人らは、控訴会社が篠原宏之所有の前記自動車(以下本件自動車と表示する)について、自動車損害賠償保障法第三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」にあたると主張するので、この点について考察する。控訴会社が自動車の販売を業とする会社であることは、当事者間に争がない。そして原審における被控訴人鐙塚郁夫本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第二六号証、原審証人増淵孝の証言および原審における原審被告篠原宏之本人尋問の結果(但し、いずれも後記措信しない部分を除く)によれば、篠原宏之は昭和四三年九月九日に控訴会社に入社し最初は宇都宮営業所業務課で販売事務を処理する係となり、ついで約二ケ月後に、配置転換により同営業所の自動車セールスマンの見習となり、本件事故当時この職務に従事していた。セールスマンの見習の仕事は、先輩に同行して顧客を訪問し、自動車販売の業務を見習うことである。篠原は、昭和四三年一二月一〇日頃本件自動車を訴外藍原長太郎から購入して、以来もつぱら通勤に利用し、たまたま先輩のセールスマンが販売車の納入に行つた場合に、本件自動車を運転してその帰社を迎えに行つたこともあつたが、その他の社用に使用したことはなかつた。控訴会社の宇都宮営業所では、セールス用の車をセールスマン一一名に対し六台用意してあるが、セールスマンがこれを利用して販売に出るときは、上司の許可をえ、会社発行の伝票を持参して、ガソリンを購入することとなつていた。セールスマンがバス、電車等の交通機関を利用して仕事に出た場合は、会社は、その実費を支給した。控訴会社宇都宮営業所のセールスマンで、自己所有の自動車を業務のために使用している者が一・二名いるが、会社はそのようなことを期待しないし、ガソリン代その他の経費を支給していない。会社のセールスマンは、業務のため他出する場合でも、朝は必ず定刻までに会社に出勤してタイムカードを押すことになつており、本件事故は篠原宏之が当日朝自宅から出勤の途上で起こしたものである。

以上の事実を認めることができ、原審証人増淵孝の証言および原審における原審被告篠原宏之本人尋問の結果ならびに原審における被控訴人鐙塚郁夫本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信しない。

以上の事実によると、本件自動車について控訴会社が、自動車損害賠償保障法第三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」にあたるとはいい難いし、また本件事故時における右自動車の運行が、控訴会社の事業の執行について行われていたと見ることも困難である。したがつて、本件事故について、控訴会社に対し賠償責任を負わせることはできない。

(松永 長利 小木曾)

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